<<< 内陸部鳩舎の訓練 >>>

        地理的に優位性のある沿岸部の鳩舎と対照的に地理的条件の厳しい内陸部に
        ある鳩舎の訓練状況です。

        レースに参加し疲労が蓄積される頃に『山越え』となる内陸部に位置する鳩舎の
        鳩にとって、ラストスパートは過酷なものとなります。
        山間部に入ると、気流が複雑に変化する上に、気温差も影響すると考えられます。

        春季の早い時期のレースや秋季の遅いレースの時期は山間部の気温は沿岸部
        に比べると、2〜3℃低くなります。
        その上、猛禽類の生息・営巣地となる場所を通るという危険性もあります。

        このような状況の内陸部に位置する鳩舎の訓練は、やはり『鳥海山』を目印に行
        なっているようです。
        『鳥海山』の手前の山形県飽海地方から北東に向かうコースと、『鳥海山』の日本
        海沿岸を通過して由利地方から北東に向かう両コースの訓練を実施。
        どちらのコースを通ったとしても帰還できるように地形を覚えさせているようです。
        訓練での帰還率は50%程度の鳩舎もあるとか。
        いかに『山越え』が大変かということを物語っていると思います。
              
        2000年秋季300kレース。うちの鳩舎が所属する連合会の帰還率は40%台で
        したが、この訓練を行っていた内陸部の連合会は70%〜80%の帰還率でした。
        厳しいふるいに掛けられ残った鳩たちの実力は流石です。
        もちろん放鳩日、放鳩地は同じ。放鳩時間は10分の違いです。

        このようなことから、『山越え』する内陸部の鳩には次のような能力が不可欠になる
        と考えられます。

        (1)『山越え』に必要な体力および体型
        (2)めまぐるしく変化する気流に耐える筋力
        (3)温度変化への適応能力
        (4)猛禽類に対する注意力、逃避能力
        (5)帰還コースを見極める帰巣能力


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        帰巣本能を発揮して、遠く離れた見知らぬ場所から自鳩舎に帰って来るレース鳩
        帰巣本能が優れていれば、方向を間違えることなく確実に帰って来ることになる。

        しかし本当に帰巣本能だけだろうか。他に要因はないだろうか。

        地理的要因はどうだろうか。例えば、うちの鳩舎がある秋田県本荘・由利地区は
        海岸に面した、冬を除けば秋田県内では比較的温暖な気候の場所である。
        南東には標高が東北第2位の秀峰『鳥海山』を擁する。
        登山した時の経験から、この山はどの方向からでも良く確認できる。
        鳩自身が鳩舎のある位置を『海岸地帯の高い山が近くにある場所』と認識出来て
        いれば、帰還目的地は発見し易いはずである。
        秋田県内陸部の横手盆地を例にとると、周辺は見渡す限り田園が広がり、目的に
        なる対象物がなく、本荘・由利地方に比べると地理的特徴がつかみにくい。

         また、レースのコースも日本海沿いに北上するコースを通るため、山越えコースを
         通るレースよりは、コースを見定め易いのではないだろうか。

        以上述べたことは、あくまでも天気が良く、視界良好、日本海からの風の影響がな
         い場合を想定しての話である。

        帰還地に目標になるものがあり、地理的特徴がつかみやすければ、優位性が増す
        ことは充分考えられる。

        実際に、うちの鳩舎の訓練は『鳥海山』が視界良好の時だけ行ってきました。
        その結果、今のところ訓練での未帰還鳩の数は “0” です。
         『鳥海山』が猛禽類の生息・営巣地であるため、雲に覆われている時は、襲撃を受
        け易くなるので、これを避けるために視界良好の日を選んでいることも、付け加えて
         おきます。


地 理 的 優 位 性