(サラ劇 5)トークを考えろ
H11・5/15

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 「でんぱた君!でんぱた君!」俺はでんぱたじゃねぇーよ
 田畑は聞こえないふりをした。出島専務が後ろから呼んでいる。
「お〜い!こら」

 「え!」 田畑は後ろを振り返りやっと気づいたようなふりをし「あ!専務おはようございます。」と言った。

 「聞こえてたんじゃないの〜〜?」
「呼んでましたか?すいません、ちょっと考え事してたものですから。」

 ぎろっとした目で出島専務は「社長が呼んでるからね。何かしたのかな〜?」
 妙な抑揚で言うのだった。出島専務は社員から「でじま専務」じゃなくて、「できま専務」と陰口をたたかれている。
 田畑の勤めるワールドレンタカーは、会社の歴史が浅く、早いころから勤めた人が常務とか専務の名で闊歩していたのである。最も頭は空っぽなのだが。

 専務と一緒に社長室に行くと、社長の島内は秘書の礼加女史と碁を打っていた。
「社長 捕まえました。」出島が言う。
 人を犯罪者みたいに言うなと田畑は思ったが、もしかしたら未収金の回収の件かなと思い気が重くなる。
 景気が悪く取引先の焦げ付きが何件か発生していた。

 社長の島内は「ちょっと待て」といい、シャツから胸に左手を入れながら次の手を考えている。
「これで生きるだろ!」と礼加女史を見上げてパチンと白石を打った。

 そこ打ったらダメでしょ。死んじゃうよ、田畑は礼加女史の次の手で勝負が決まるのがわかったのだが礼加女史は盤面を見ている田畑を横目で見て、「社長、少し休憩しましょう。お茶入れます。」と言い立ち上がった。「そうだな」と言いながら社長は首をグリグリ回し田畑にまあ座れと言い今まで礼加女史の座ってた場所に座らせた。

 ほんのりとなま暖かいソファに腰掛け田畑は盤面を見てやっぱり死んでるよと思いながら島内を見た。

 「たばた君、前、日報堂に勤めてたんだよな。なんでやめたんだ。」島内は碁石をもてあそびながら聞く。
 「広告は自分に向かなかったんです。」
 「どういうところが?」
 「あまりにデコレーションが多すぎて、疲れてき たんです。」
 「君はでもコピーを主に考えてたんだろ。言葉  だけでよかったろ。」
 
 「ええ。でもクライアントがあまりに注文が多いんですよ。D通とかH報堂のようにメジャーな会社に頼めない会社が相手でしたが、そういう会社に限って口では任せるといいながら、何度もやりなおしになりますし、結局言う通りに作ってそれがあまり効果がないと、文句を言われるものですから。ほとほといやになりました。」

 「君の考えたコピーで、「今空が落ちたらどうする!」
空を見上げて叫ぶのがあったろ。あれおかしかったよな。みんな一斉に傘をさして、♪アンブレラ〜はみかさや〜と歌う三笠屋の傘のCM

 地方の会社のCMだったのでまさか知ってる人はいないと思っていたので田畑はびっくりした。

「あの会社はつぶれましたが好きににさせてくれましたねぇ〜。」
 田畑は自分の作品を覚えていてくれたか社長は!と思いうれしくなった。

 「だからちょっと考えてくれる」
 「え!」
 「だから枕詞みたいなもの」
 「何ですかそれ」
 「かんたん、かんたんすぐできる。電話で最初 に言う言葉だよ」

 社長はにこにこしながら礼加女史の入れたお茶を飲むのだった。

 礼加女史が言った。
「業界大手のN社は、ありがとうございます。NO.1サービスのNレンタカーでございます。いますよね。そういうトークを考えてほしいということですが」

 どこの業界大手の口紅つけてんだろと思いながら、田畑は女史の唇、そしてきゅっとした品のいい顎を見つめていた。

 「いつまでですか?社長」
 「今!」
 「え!すぐですか?」
 「そうだ。碁といっしょで直感的にひらめいた手が結局は一番よかったという例がビジネスの世界では多い」
 「そう、そう社長のおっしゃる通り、すぐ考えなさい。」
なんにも出来ま専務が腕組みをしながら口を出す。とりあえず田畑は3つ程考え、言ったのだった。

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 「はいお車お届けします。ワールドレンタカーです。」
 電話に出た元気のいいOLの海ちゃんの声が社内にこだまする。

 それを聞きながら高木は、「はい尾車親方お届けします。相撲協会です。チケット買ってください。」
と言いながら笑い、この平凡なトーク一体誰が考えたんですかと田畑に聞くのだった。

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