夕陽の恩返し H11・1/25

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女にふられた男は夕陽に向かって「バカヤロー」と叫んだ。 その夜飲み歩き泥酔した男は、翌朝朝日に向かって「すみません」と手を合わせたという

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 朝日のまぶしさに目を覚ますとベッドのとなりに白雪姫が寝ていた。 「わざわい転じて福となるか」・・・男はつぶやいた。

 男はさてどうしたものかとベランダからキラキラ光る海を眺めていた。夕べの記憶は全くない。ただ頭が、小さい頃そろばん塾のめがねをかけたキツツキに似た先生に際限なくそろばんでコツコツ叩かれた後のように痛い。

 男のそばでカラスに似た青い鳥が2羽飛び回っていた。きれいな青だが嘴が白く異様に長い。「何だろう?瑠璃かな。それにしては大きいな。」
2羽の青い鳥はベランダの手すりにとまり男を見上げそれから互いの長い嘴をまるでこれからソバを食べる誰かが割り箸をこすりあわせるかのようにすりあわせた。
 
ジージー音がする。その音がキーキーと高くなりそしてギーギーとうるさくなり鳥の嘴から煙が上がり、きな臭いにおいが立ちこめた。

 どうしたことだろう。互いの嘴はすり減り今にも穴があきそうだ。それでも2羽の青い鳥はやめない。1羽の鳥の目が悲しそうに男を見ている。「やめろー!やめろーやめてくれー!頼むからー」

 男は自分の大きな声で目が覚めた。
ベランダから見える海は相変わらずキラキラ光り輝いている。

 「夢なんだ。これは夢だ。」
男は、朦朧とした頭でベッドに戻ろうとし敷居につまずき、ベッドのそばに倒れ込んだ。ベッドの白雪姫はそのままだ。男は何かに憑かれたように立ち上がりそして白雪姫に口づけをした。

 白雪姫はゼンマイを回されたオルゴール人形のようにぎこちない動きで動き出し「コ・ン・ニチワ」と抑揚の狂った電話局の無機的な女の番号案内みたいに言った。
「やぁ・よろし・く」男ももつれた口調で言った

 それから白雪姫は男に甘え甲斐甲斐しく尽くし、男は白雪姫が愛おしく二人は幸せに暮らしている。

「インプリンティング・・ インプリンティング・・ すりこみ すりこみ すりこみ ギーギーギー・・・・・」
 
2羽の青い鳥が長い嘴をこすりあう音が遠い昔ベランダで聞こえていたのを男が思い出すことはもうない
 
夕陽に向かってバカヤローと叫んだことを思い出すことがないのといっしょの事だ。・・・・・・

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