まむしの唾 H11・ 1/27


 何の話から蛇の話になったか知らないが
誰かが家の近くの沼にまむしがうじゃうじゃいて危険だと話し始めた。
 
 歩いているとあちこちにいるらしい。
その沼は農業用水に使用しているのでまむしがいても時々は見に行かなければいけないという。

 ある食品メーカーにおじゃまし工場の休憩所で従業員のそんな雑談を聞いていた。

 するとT部長が口を開いた。
「そんなにたくさんのまむしがいたら水に毒が混ざるんじゃないか。水は大丈夫なのか!」
と言ったのである
「えっ?」
と誰かが言いしばしの沈黙が流れた。
みんな部長を見ている。

 となりに座っていたKくんが笑いながら、
 「そうですねぇ。まむしが一斉に用水路に唾を吐き散らしていたらそうかもしれないけど〜」と言ったものだからみんな笑いだし部長もなぜかいっしょに笑っている。

  そのときみんなの頭の中にはまむしが「ぺっぺ」と唾を吐く様子がそれぞれ形はどうであれ浮かんでいたと思う。
 
 私の頭の中ではまむしが立ち上がり整列し一斉に唾を吐く光景ができあがっていた。
 
 始業時間のベルが鳴ったのでみんな立ち上がり私は事務所の方へと歩き出した。すると年配のAさんが後からついてきてこう言った

 「F君、F君、うちの部長って本当にH校(私の出身校)出たのかぁ」と聞くのである。「そうですよ」と言うと 「はぁ〜」とため息をついた。
T部長はこの食品メーカーの製造責任者である。おそらく大量に水を工場で使用するのであらぬ心配をしたのだろう。

チバ部長はそれからツバ部長と呼ばれはじめた。

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