政治家(後編) H11・4/4

政治家(前編)があります


 佐藤栄作 田中角栄 中曽根康弘 私の印象に残る首相の名前である。
首相の頃の功績もあるがそれよりも印象に残った訳がある。

 佐藤首相の場合は小学か中学生の頃だと思うが新聞記者を排除し記者のいない会見場でTVカメラだけに向かって話し続ける異様な光景
をTVで見た事。(確か記者は真実を書かないとか言って排除したのではなかったろうか)

 田中首相は今太閤ともてはやされた男が、ロッキード事件で逮捕され闇将軍と呼ばれるようになったその落差。

 そして中曽根首相は列車で私の前の席に一見無防備に座っていた事が印象に残っているのである。
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 目の前の中曽根元首相の髪の毛の薄い後頭部を見ながらタバコの煙がかからないように通路側に煙を吐いていた。
 トイレに立とうと席を窓側から通路側に動くと、動いた音に反応するかのように前の席の通路側に座っていたがっしりした男がちらと少し後ろを振り向く。秘書には見えない。恐らくSPというものなのだろう。

 後部のドアの方のトイレに行き再び車両に戻ろうとドアを開けると、SPは後ろを大きく振り向く。
 そうこうしているうちにあさひはあっという間に大宮の駅についた。ホームに止まると同時にSPが立ち上がる。そしてこれが仕事だというように彼は車両の前後のドアに目をやり気を配り始めた。

 元首相は相変わらず印刷物を読んでいる。誰もグリーン車には乗り込んで来なかったがSPは列車が出発するまで、ドアに気を配っていた。
 
 中央付近の座席を選んだのは
これだったのだ。恐らく不審人物が乗り込んできたときにそれを察知し、それに対応するためには少しでも時間に余裕のある中央部の席が都合がいいのである。

 そう考えながらも私は疑問が湧いた。なぜ私に席を替わってもらわず、前の老夫婦と思われる二人に席を替わってもらったのかということだった。

 私の後ろの席は空いていた。私の席に座った方が後ろに誰もいない分安全ではないのか。ただこの場合私が確実に危険人物でないと判断できた場合は有利になる。

 つまり途中駅からの乗客が後ろに座る事はないからである。

 ただ私が危険人物ではないという保証はどこにもない。(この時私は背広を着てネクタイをしていたがそれが危険人物ではないという判断材料にはならないのは様々な事件が証明している。)

 この時の私の頭の中には日本社会党の浅沼稲次郎を刺した右翼の少年のテロリストのTV映像が浮かんできた。SPがいるにしても、元首相の頭は目の前だ。(もちろん私はテロリストなどとは全く無縁であり、そんなことをする人間ではない。)

 つぎに頭に浮かんだのは戦後の東京裁判で裁判中に、東条英機の頭を後ろの席から叩いた同じ戦犯として裁かれていたメガネの男の事だった。
 映像では男は落ち着きがなく気がふれたようにも見え頭を叩かれた東条英機は苦笑するのである。

 もしここで私が元首相の頭を叩いたり、なでたりしたらどういう事になるのだろう。
「恐らく新聞に載る。怖い怖い」そう思い週刊誌を読み始めた。

 しかし色々なことが頭を巡る。「ロン ヤス 」と呼び合いまるでマージャンのロン ヤス目三色くずれというような事を連想させたロナルド・レーガン大統領との会話

 日本の国土を空母に見立てた「不沈空母発言」 太平洋戦争のミッドウェー海戦で米国により日本海軍の空母は加賀、赤城だったか忘れたが壊滅状態に陥ったのではなかったか。

 ブレーンに有名劇団の主催者がいたのではなかったか。体制に組みする劇団とは何なのだろうと昔思った事。
 
  元陸軍参謀で商事会社にいる人に意見を聞いているという記事など。(結構いろいろ思い出すものです)

 元首相から様々なことを連想し国家の最高権力者の地位にあった人が目の前にいるということが妙に不思議だった。一人の人間にすぎないと思っても全く違う世界の人間に思える。

 列車は一時間足らずで高崎駅に到着し元首相はホームで支持者と思われる多くの人にかこまれ頭一つ分高いところから愛想を振りまきホームを歩きながら車両の中央部を通り過ぎるとき確認するような感じでちらと私のほうを見た。

 列車が動き出し今度は誰に遠慮することもなく吐き出されたタバコの煙がさっきまで座っていた席を通り過ぎていった。

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