ななちゃんの悲劇 H11・8/7


 前に勤めていた会社で同僚をちゃんづけで呼ぶことが流行ったことがある。
エガちゃん(江川)山ちゃん(山田)とかゲンちゃんという風に名字か名前どちらかにちゃんをつけ互いに呼んでいた。
ある時営業所に北海道の根室出身で七海(ななうみ)と言う新人が配属されてきた。
我々はいつもの通りちゃんづけで彼を「ななちゃん、ななちゃん」と呼び始めた。

 ななちゃんは最初おどろいたようだがすぐに慣れ「はい。はい」と返事をしてテキパキ仕事をこなしていたのである。

 ななちゃんが来て1ヶ月くらいたった頃他の営業所の社員が遊びに来て、私たちに言うのだった。「他のはどうでもいいけど、そのななちゃん、ななちゃんはやめろ!顔と名前が合わない。」

 我々はなんの違和感もなく習慣的に呼んでいたのだが、そう言われてみると確かにと思うことはあった。ななちゃんは顔が赤く割とごつい顔ツキだった。
「合わないよ。顔と名前が。そうだろ!」遊びに来た社員は再度言う。
「そういえば何かなぁ」と誰かが言うと「合わないなぁ」と連鎖していくのだった。
山ちゃん(山田)が「カニに顔が似てる」と言い始めた。当然この場にはななちゃんはいなかった。

 私も言われてみて始めて合わないとは思ったが即座にこれはなんかおかしいと思った。

 ななちゃんと呼ぶのをやめろと言っている社員は「サトーマモル」という姓名だったが、彼はまもちゃん、まもちゃんと回りから呼ばれていたのである。自分だって少女漫画の呼び名みたいじゃないかと思ったが彼は自分がいい男だと思っているので気にならないらしい

 可哀相にそれからななちゃんは一番年下だったこともあり、みんなから「ななうみ」と呼び捨てされるようになった。面食らった事だろうが、彼はそれでも「はい。はい」と返事をしテキパキ仕事をこなしていたのだった。

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