Kさんに教える オマケ編  H11・9/4

前編  後編   ユーミンの曲を録音
 
 「リズムはこんな感じね」と言いボサノバ風のリズムを教えた。親指でギターの低音弦(4.5.6弦)を弾き
1.2.3弦を残りの小指以外の3本で弾くわけである。例として長谷川 清の「別れのサンバ」を弾いてみせる。

 ♪な〜んにも思わず〜タンタンタタータとか弾いて見せたが私にはボサノバとサンバの違いを教えるだけの知識はない。
ただこんな感じでと言い雰囲気をつたえるわけである。(早い話がボサノバもサンバも同じ様なもんだと言う乱暴な考え方)

 「フォークギター弾き語り集」という雑誌をみると「あの日にかえりたい」のキーはEmである。いくらかテンションコード(妖しげな響きの和音と思ってください。)が出てくるが押さえ方の難しいコードはすべてテンションをとっぱらって教えた。

 Kさんは歌はもちろん覚えている。ただ歌いながら弾くとリズムが歌につられてぎこちなくなるのでとりあえず歌なしでリズムを一定に弾くように教えた。

 なんとか格好がついてきたので、それに私がメロディをのせて弾いていくインストスタイルにした。
これがなかなかメロディがいいので気持ちよかったのである。決して爽やかなボッサノバの♪イパネマの娘のような感じではなく、梅雨時の雨音のような音が汗や店の油が染み込みジトジトしているギターから流れるのであった。

 使い込まれボディにキズが無数についた歴戦のギターを弾くと頭の中になぜか旅芝居の沢 竜二の剣劇ではないが「赤城の山も今宵限り〜」の国定忠治の銘刀小鉄を唐突に思いだした。

 ギターを抱いたキカイダー(仮面ライダーと同様石森章太郎の原作「人造人間キカイダー」の事です。私はTVでの志穂美悦子のビジンダーのファンでした)
のボロロンという指と音が合わない郷愁の音色なども思い出しながら、私は「先生!師匠!」と呼ばれ相変わらずキリンの中瓶をコポコポ注ぐKさんとデュオとなって一体化していくのであった。(髪がやや薄い七三分けとロングの原田真二風ヘアーのデュオという異様な組み合わせでしたが。)
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 「先生!師匠!」の余談だが、「社長さん、会長さん」と呼ばれる店があると聞いたことがあるが私は韓国で同僚が「上様!」
と呼ばれたのを聞いてびっくりしたことがある。
最もクラブではなくおみやげ店でしたけど。
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ある時店が開いてからの早い時間に2人で練習していたらママさんが言ったのである。
「ねぇ!それ録ってみたら」
 Kさんは私の顔を見てニターとし「やってみる?」
と言ったのだった。

 私もニンマリとしたKさんの顔を見ているとこれはデキはともかく録ってみるかという気になり
店のラジカセで、録音することにした。
一発目少し緊張し、リズムが走るのがわかる。二度目はまあまあだった。

 「聞いてみようっか」とママさんが言いカウンターの一段高い所でガチャとカセットのボタンを押した。
「♪タタタタター」(泣きながら〜)ユーミンの作ったせつないメロディが聞こえると我々3人はまるでラジオから流れてくる初めての洋楽のオールディーズを聞くような感じで(言っておきますが私は他の2人とは年が15歳くらいは違っていたはずだが2人の正確な年齢はわからない。)耳をすました。

 微妙にユーミンの歌みたいに音程がわずかだがずれている。
カセットから流れる音は猫のあくびのようにけだるく、そしてどこか突き放した感じがあり、正直なかなか悪くないと思った。
 リズムは互いにモタるが、雰囲気はあるのである。ママさんもそのけだるい感じと時折出る私のチャラチャラした音色が気に入ったのか、店に来る客に「ねぇ聴いてみる?」と言いニコニコしながら聴かせていた。(聴かせてその反応を面白がっているわけですね)
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10日もたった頃だったろうか。
少し遅い時間に店に行き引き戸を開けたとたん、Aという男がカウンターに座りながら、「junちゃんこれこれ!」とカセットコーダを指さしママさんとニヤニヤ笑っている。

 Aは言ったのだった。
「これってガソリンスタンドで売っている安いムード音楽のミュージックテープみたい!」

 ママさんはケラケラ笑い私も正直可笑しかった。確かに言い得て妙だったのである。

 Aはその時かその後だったかは忘れてしまったが、後にちびまる子ちゃんの声優で有名になる「たらこ」のバックでドラムを叩いていた。

 ドラムの腕は確かだったのだが、高校生になるまで生卵を割れなかったという(卵の割り方を知らなかったらしい。お母さんがしてくれていたようだ)ドラマーだった事をここに書いておきましょう。

 KさんはAのテープの話を聞くとまんざらでもなくニコニコしていたそうである。(半分誉め言葉だと思っていたわけだ。これが)

 私は時々思う。あの日にかえりたいと。そして実際ユーミンの曲を聴くとますますあの日にかえりたい
と思うのである。でもそれはKさんやママさんやAと会う前の私の時代に帰りたいのである。


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次回は新宿のロックバー? 
「ローリング・ストーン」での話しです。
白人から通訳を頼まれる。

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