1984.10.25放送サウンドストリート
「ゲスト:加藤和彦」
| 10/25放送 |
ゲスト・加藤和彦 |
| 曲名 |
アーティスト名 |
収録CD・番号 |
| あの頃、マリー・ローランサン |
加藤和彦 |
| ニューヨーク・コンフィデンシャル |
加藤和彦 |
| スモーク・カフェ |
加藤和彦 |
| テレビの海をクルージング |
加藤和彦 |
| 愛したのが百年目 |
加藤和彦 |
放送概要など
「 」内は坂本龍一氏、加藤和彦氏コメントの抜粋。
坂本龍一(以下坂本と略)「加藤和彦さんは最近ソロアルバムをお出しになられたんですよね」
加藤和彦(以下加藤と略)「そうなんです。坂本さんにも・・・なんかよそよそしいなあ(笑)。
教授にも手伝ってもらった『あの頃、マリーローランサン』という1年半ぶりのアルバムです」
坂本「これの前は『ベルエキセントリック』ですね」
加藤「そうです。『ベルエキセントリック』がパリでやって、その前がベルリンでやった
『うたかたのオペラ』、その前にバハマ録音の『パパ・ヘミングウェイ』があって」
坂本「それが海外録音3部作(笑)。で、その前が『ガーディニア』?」
加藤「そう、その前に初めて教授にあったんだよね」
坂本「2人の歴史をひもといてみると(笑)、ここまできたという感じですね」
加藤「僕は現代の中でロマンティックな憧れみたいなものを探そうと思って曲を作るんだけど、
なかなかそういうテーマがないのね」
坂本「東京ではけっこう難しいですね」
加藤「僕もそう思ってたの。
パリやベルリンで録音したりしたんだけど、やっぱり東京で探さなければいけないというか。
それが、歌詞が赤い手ぬぐいマフラーにしてっていうのはイヤだからね(笑)。
違うのでやろうと思って」
坂本「だけど、そういう楽しみを受け入れる土壌というのが出てきたことは確かね」
加藤「そうね、レコードって特殊な人が買う感じがあるでしょう。
だけど本っていろいろな人が読むじゃない。レコードもそういう感覚でね」
坂本「そうそう。まったく同じこと考えてるんだけど。
サラリーマンになるとレコードを買わないじゃない。やっぱり10代が購買層でしょ。
僕は今31歳だけど、31歳の考えとか経験をもとに音楽をやっているわけ。
だから、やっぱり10代に向けているけれど、同世代にも向けているし、
それは親父に発しているし。みんなに聴いてほしいんだよね」
加藤「そういう音楽ってボクは絶対にあると思うんだよね。
たとえば、このアルバムだって教授がこの詞好きって言ってくれたじゃない。
僕自身気に入ってるし、ウチの両親に聴かせてもこれいい歌だっていうし、
僕の同世代が聴いてもいいしみたいな。
聴く人によっていろいろな感じ方が出るっていうのもあると思うよ」
坂本「でも、10代は買わなくて30代だけ買うようなレコードがあってもいいんじゃない?」
加藤「音楽だけに限らないんだけど、いわゆる大人の文化がないとかなんとかいうじゃない。
だけど、それはみんながないないと言って批評家の目になっちゃってるだけでさ。
なにか作らないといけないと思うよね。
それを出来るのが、例えば教授とか、僕らの世代だと思うのね」
坂本「ちょうどいま来日しているデビッド・ボウイも36なんだよね。
ずいぶん精力的な人ですねぇ、あの人も」
加藤「変わらないものね。僕が初めて見た時とほとんど変わらないね。
例の名盤『ジギー・スター・ダスト』を出す前の『ハンキー・ドリー』のあたりに見たのかな
エラく小さい1,000人ぐらいの会場でやっててね。
シンガー・ソングライターのちょっとぶっ飛んでる人みたいな感じだった。
半分ぐらいジャック・ブレルの曲を演ってたから、
変なハード・シャンソン・イギリス版みたいな感じだったんだよね」
坂本「そういうとこあるね。ストーリー性強いもんね」
加藤「だから、そういうのなんか知ってるから、
いまどんな派手なことやっててもそれを見ちゃうんだよね。
単に派手でワァーとカッコイイ、そういうこと以上にね」
坂本「昔のそうい粋なボウイが好きだった人には
『レッツ・ダンス』なんてバカじゃないなんてところもあるけどね」
加藤「やっぱり商業的とかもろもろのものが絶対入っているからさ、ああいう形態に。
とくにアメリカでの成功みたいなのがあるじゃない。
あまり分析する必要もないけど。気軽でいいんじゃないですか」
坂本「僕も、なんか『レッツ・ダンス』はエネルギッシュで好きだな。
というか、その前がちょっと落ち込んでたんじゃないかなって思うから。
だからニューウェーブ病って底が深くて、みんなやられたって感じがする。
ハシカみたいなものでね。
最近はもうレコーディング中にあーニューウェイブみたいだとかってさ、バカにするんだよね」
加藤「頭デッカチになっちゃう」
坂本「そう、だからニューウェイブみたいなにおいがするとヤダーッみたいなね。
イギリスでもニューウェイブから、ABCみたいなダンサブルがきて、
そのあと、シンガーソングライター的なのが増えたのね。
アメリカの76から77年ぐらいまでの、
例えば僕が好きなフィフス・アベニューとかスティーリーダンとか。
ああいう、もうちょっと真剣なというか、
マジで楽しい音楽になってくるんじゃないかっていうにおいもあるのね」
加藤「なんだったかな、教授が言ってたんだか、書いてるのを読んでさ。
日本人って、なにかを感じる力と表現する力と両方あるうちで、
表現力のほうがちょっとヘタだ、みたいなこと言ってなかった?」
坂本「ウンウン」
加藤「本当、そのとおりだよね。別に日本人論って分けじゃないんだけど、
音楽にも取り入れるのと出すのと両方あってさ。
ニューウェイブの時代っていうのは、本当、出すことだけにこだわって(笑)、
あんまり取り入れないのに出しちゃったら、なんにもなくなっちゃったみたいな。
バランスとれてないとマズイんじゃないかな(笑)」
坂本「その話をこのあいだ、ウチのハリーとしましてですね。
もうこの5年間で結局、いままでに自分が20何年間ためてきたものを出しきっちゃって(笑)
ほんと、自分の原点に帰らないとダメだというハナシになってますけどね(笑)」
坂本「僕がトノバンを見て凄いなって思うのは、様式にたよるといったらおかしいけれど、
きちんとテーマを決めて、きちんとアルバム作るじゃない。
そのプロデューシングは僕にはできないと思ってたのね。
僕もなんとかやろうとしたことがあったんだけど、結局できないわけ。
私小説風になったり、サウンドの表現のほうが勝っちゃうのね」
加藤「僕なんかが見ていると、教授のはアカデミックで全部バーッと知ってるわけじゃない。
僕はテーマは作るんだけど。
教授の場合は最初から音の全体像が見えちゃってるわけでしょう。
すごい不思議なんだよね。譜面からというか、タテの音が聴こえる人は」
坂本「他に言いたいことは」
加藤「やっぱり、さっき教授が言ったように、ほんとうに同世代の人に聴いてほしいな。
音楽って特別なものじゃなくてね。
僕らはファミリーと呼んでいますが、そのファミリーが作る音っていうのは、
教授にしても僕にしても、真剣に考えて、生活から来ている音楽だけに聴いてほしいですね。
そういうものの娯楽って絶対必要だと思うんだよね。
単に耳になじみやすいからいいとかね、流行ってるからいいとか、そういうんじゃなくて。
昔の小説なんかでも教養小説なんて言い方したじゃない。それは娯楽なんだよね。
その底辺には、なんかビシッとしたものがあるのが娯楽だと思うんだよね」
坂本「そのとおり、団塊の世代の奥様方に聴いてほしい(笑)。
カルチャースクール行かなくてもいいですが、
ジャズダンスはやめて加藤和彦を聴いてください」
加藤「役に立ちますよ(笑)」
久しぶりのサウンドストリート内容更新です。
実に2カ月半ぶり(!!)です。
次回は、いつでしょうか。お楽しみに。
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