胴上げ注意
知人の結婚披露宴に出たときのこと。最後に新郎の胴上げがあった。この新郎、かなり小柄な方で、胴上げされると身体は宙高く舞い、その高さは2・3mにも達した。
座は大いに盛り上がったのだが、見ていた私は不安な気持ちになった。
というのは、かつてこの胴上げで危険なことがあった例を見たり聞いたりしているからである。
実際に見たのは、次のような例である。
新郎は私の大学時代の友人。彼の故郷での披露宴であったので、私たち友人はかなり長い距離を列車に乗って、全国各地から集まった。
宴も終わりに近づき、新郎新婦退場ということになった。よくある例だと参列者がアーチをつくり、それをくぐって新郎新婦が退場するのだが、そのときには司会者が「皆様、ご着席のまま、拍手でお送りください」という指示だった。これだと胴上げはないなとと思い、精一杯の拍手で彼を送り出したのだが、お披露喜口で深々とお辞儀をする我が友人のもとに走り寄る影が二つ。
彼の地元の友人たちであった。
その二人はあろうことか、たった二人で我が友人の新郎を胴上げしようと試みたわけである。
最初から胴上げをするような状況であったならば、私も胴上げの輪に加わったはずなのだが、なにしろ「ご着席のままお送りください」という指示があったばかりなので、私たち大学時代の友人一同は胴上げに加わることができなかった。
その結果、我が友人は、たった二人で胴上げされることになり、人手不足のためか、胴上げする人間の酔った勢いのためか、胴上げされた身体は斜め後方に舞い、受け止める人もいない場所に落下し、肩から床に激突するという状態になった。(まるでプロレスのバックブリーカーを見るようであった)
我が友人は、したたか打った肩を押さえ痛そうにして退場した。その後、彼のためにセットされた二次会の会場で彼の登場を待っていたら、彼が病院に行き「鎖骨骨折」の診断を受けて緊急入院したとの情報が入った。主賓のいない二次会に長居する必要もないので我々大学時代の友人はすぐに帰路についたのだが、彼のけがに関係なく地元の友人たちの二次会が盛り上がっていたのは、私にしてみれば寂しい気がした。
その後知った情報によれば、彼は新婚旅行をキャンセルし、新婚旅行のためにとっていた休暇以上の日数を入院のために費やしたのだそうだ。
私が聞いた例は次のようなものである。
披露宴の後に行われた胴上げが、天井の低い場所で行われたために、新郎は胴上げによって天井の壁に激突した。そのために脊髄損傷で重体となり、結果的に下半身不随の状態になった。それが原因で結婚話は破談となり、離婚ということになった。
ここに挙げた例のように、結婚の幸せを祝うはずの胴上げが、場合によってはけがなどの悲惨な状況を引き起こすことにもなる。二つ目の例のように、そのために結婚そのものが破局に陥るということもあるし、最悪の場合には首の骨を折って死んでしまうということにもなりかねない。
それを避けるためには、胴上げをしないのがいちばんである。司会者がはっきりと「当会場では胴上げはお控えください」と言えば、それに逆らって胴上げをするということは少ないだろう。
どうしても胴上げをしたいという場合には、天井が低い場所を避けるようにする。さらに高く上げすぎて危険が生じないように、胴上げされる人のズボンのベルトのあたりを、胴上げするメンバーの一人が保持するようにする。もっと念を入れるとすれば、頭のあたりに位置する人は、失敗して落ちてしまったときのことを想定して、頭や肩から床に落ちないように配慮するということも必要だろう。
私は、胴上げをする場面に遭遇したときは、そういう配慮をしているのだが、参加メンバーの中にいつも私のような人がいるとは限らない。酔った勢いでやった胴上げがとんでもない結果になる危険性もあるので、できるなら披露宴会場の介添え係の人(この人は常に素面である)が、胴上げの際にも中に入って危険を防止するという配慮が必要なのではないだろうか。
<03.04.06>
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