自販機使用の心構え



 数年も前の冬のこと、駅前の缶ジュースの自動販売機で「缶入りおしるこ」を買った。(いつもおしるこを買うわけではないが、この日は寒かったもので)

 「あちあち」などと言いながら、熱い缶を持って車に乗り込み発進しようとすると、なにやら外からけたたましい音が聞こえる。窓越しに見ると、自動販売機のランプがビカビカと光ってファンファーレのような音を発しているのであった。

 「ランプが全部つくと大当たり!もう1本もらえます」などという販売機で、当たりが出たものらしい。もちろん私が買ったときにである。慌てて外に出て、もう1本いただくために、「どれにしようか」などと考えていると、制限時間が来たのか、突然ランプも音も消えてしまった。かくして、私は当たりのもう1本をもらい損ねたのである。

 このときからである。私が缶ジュースの自動販売機で買う前に、「もし当たったら、この缶をもらうことにしよう」と決めてからボタンを押すようになったのは。

 しかし、あの時以来、一度も当たりを出したことはなく、私の心構えも無駄になっている。

 聞いた話では、缶ジュースの自動販売機で当たりが出る確率は、パチンコのフィーバーが出る確率より、ずっと低いとか。しかし、万一の場合に備えての心構えだけは、きちんとしておきたい。


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